山田矛門さん
DAIICHI JITSUGYO (THAILAND) CO., LTD.
◇ご経歴を教えてください
日本の大学を2013年に卒業し、電子部品の商社に営業職で入社しました。その会社では若手のうちから海外経験が積めることに魅力を感じ新卒で入社しました。希望していた通り、10ヶ月間日本で研修を行った後シンガポールへの駐在が決まり現地で1年間勤めました。その後、ご縁がありシンガポールで第一実業グループのDAIICHI JITSUGYO ASIA PTE LTDへと転職をし、現在はそのグループ会社のタイ法人の駐在員として2年間勤めています。東南アジアでの生活は丸6年になります。
◇前職ではどのようなことをしていましたか?
前に働いていた会社は電子部品の商社でした。例えばダイオードやヒューズなどのプリント基板の上に乗るような小さな部品を中国や台湾などの海外から仕入れ、日本で販売する仕事をしていました。
◇現在の会社の事業内容を教えてください
DAIICHI JITSUGYO (THAILAND) CO., LTD. は設備関係の商社で、事業は3つあり、
1. 産業機械事業
2. エレクトロニクス事業
3. プラント•エネルギー事業
となっています。例えば石油を掘削するような大型設備から、工場にあるような基板のはんだ付けを行う設備、また、医薬品の製造や品質検査のための設備まで幅広く取り扱っております。その中でも私は1番の機械の自動化に関わる部署におり、東南アジアでも年々人件費が増加している中で、省人化や品質保証に有効なファクトリーオートメーションをご提案しています。例えば自動車のバンパーや扉などに使われる樹脂成形が自動でできる設備を取り扱っています。タイに進出している外資系企業の半分以上が日系企業と言われている中で、やはり私どものお客様も日系企業が多いです。
◇海外で働くにあたって大変だったことはなんですか
各拠点ごとに文化も違いますが、海外の駐在員は母国から来て任期の数年が経つと帰ってしまうような存在と思われている背景があり、その中で現地の人との充実したコミュニケーションを図るのはとても大変でした。
◇具体的にどのように解決しましたか
やはり積極的に現地の言葉でコミュニケーションを図る事です。そのために独学でタイ語を勉強しています。また、できる限り現地のスタッフと同じ食べ物を食べたり、勧められたものは必ずトライすることを心がけました。「同じ釜の飯を食べた仲」という言葉があるように食事を共有することでチームとしての仲間意識も強くなると思います。
◇前職と現職での相違点を教えてください
前の仕事では単価が1円にも満たないような電子部品を売っていたため、毎月10万個、100万個というような単位で製品を取り扱っておりましたが、現在の仕事では単価が何千万円、何億円とするような設備で、何年間もかけて進めていくプロジェクトのため、全く販売する方法が異なります。しかし、同じ商社という点ではお客様はもちろん、メーカーの方を大切にするという根本は変わりません。お客様によっては商社を通さずに直接メーカーさんから購入した方が安いといった考えをお持ちの場合もありますが、その中でも自分たちの付加価値をいかに伝えるかを大切にしています。よく言われる「メーカーはモノで勝負する業界、商社は人で 勝負する業界」という通りだと思います。
◇現在進んでいるプロジェクトを教えてください
タイでは自動車産業がとても盛んで、現在は自動車を製造するための設備導入のプロジェクトが進んでいます。大型設備の場合、ご提案から実際の導入まで数年間かかるため、慎重にプロジェクトを進めていき、達成できた時にとてもやりがいを感じます。
◇シンガポールで第一実業への転職を決めたときの要因は何でしたか?
弊社は設備関係の商社ですが、自由度が高く、お客様の期待に柔軟に応えられることにやりがいを感じたからです。例えば、設備ではありませんが、プラスティックのコンテナが欲しいとのご要望をお客様からいただいたため、取り扱いメーカーを探して大量に受注していただいたこともあります。また、まだ日本では導入されていないような新しいテクノロジーの設備を取り扱うこともあり、新規マーケットの開拓は新しいもの好きの私にとってはとても魅力的な仕事です。
◇タイにいらっしゃったきっかけを教えてください
もともとシンガポールのDAIICHI JITSUGYO ASIA PTE LTDで働いていたとき、タイ法人にはない印刷設備を扱っている部署を担当していました。そのためシンガポールからタイの案件を扱っており、出張ベースでタイに来ることは良くありました。そこで2年前に私がタイに異動し、現地で各案件を担当するようになったのがきっかけです。
◇チーム編成を教えてください
私が所属する部署では日本人が4人おり、そのうちの2人が部長と課長です。タイ人スタッフが6人です。ローカルスタッフとの垣根をなくすことを目指していてみなさんとても賑やかな職場です。
◇1日のスケジュールを教えてください
定時は午前9時から午後5時半ですが、午前中はお客様のところへと訪問し、オフィスに戻ってくるのは午後4時頃です。訪問先は工場が多いので 片道1時間以上かかります。その後オフィスで事務処理を行い午後8時頃には退社していますが、夜はお客様との会食に参加する事が多いです。
◇各地での生活はどうですか
日本で働いていた時は朝晩満員電車に揺られて通勤しておりましたが、当時の事を思い出すと、出来る事が限られている電車通勤の時間も色々な事に考えを巡らす事ができたので大切だった様に感じます。シンガポールはとても綺麗な街でしたが、皆様ご存知の通り物価が非常に高かったです。英語が公用語の為、コミュニケーションを取ることは比較的簡単に出来ました。タイは日本人が多く、美味しい日本食も食べられます。また物価も比較的安いので、生活していく面ではタイが一番過ごしやすいと感じています。
◇海外生活で苦労したことはありますか
お互いに母国語ではない中で英語でのコミュニケーションに慣れるまで時間がかかりました。例えば、タイ人の英語は語尾が上がるという特徴があります。通じない時はタイ風の英語で発音してみたり、タイ人特有の訛りを注意深く聞いてみたり、通じ合えるまで諦めずにコミュニケーションを取る姿勢で乗り越えました。
◇海外志向になったきっかけを教えてください
私の実家は米軍基地が近くにある土地柄の為、英語圏の方々とコミュニケーションを取る機会が多くありました。日頃から身振り手振りのジェスチャーでコミュニケーションを図ろうという努力をしていましたが、もっと話してみたいと思うようになり英語に対する興味を持ちました。それから英語を話せることが自分がコミュニケーションを取れる人が増えるということに気づき、英語を積極的に習得していくようになりました。
◇今後のキャリア設計を教えてください
まさか自分が東南アジアで働いているとは思いませんでしたし、将来のことは予測不可能ですが、しばらくはこのまま海外で働いていたいと思います。また将来的には若いうちからの海外経験を日本で還元できるような人材になりたいと思っています。
◇将来東南アジアで働きたいと思っている人に一言お願いします
日本にいる間は海外で働くことはとてもハードルの高いことのように思っておりましたが、一回外に出て働いてしまえば思っていたよりも簡単で、それよりもそこで何を成し遂げるかの方がずっと難しく大切なことだと思います。海外で何をしたいのか、明確な考えを持って日本を飛び出せば現地でも助けてくれる人もきっといます。とにかく頑張って一 歩踏み出してみてください。
山田さん、インタビューのご協力誠にありがとうございました。
「メーカーは商品で勝負する業界、商社は人で勝負する業界」というお言葉がとても印象に残っています。また、設備系商社の詳しいお話をお話ししてくださりより知識が深まりました。記事に関するご意見、ご感想や、タイでのキャリアに関するご質問なども受け付けておりますので、何かございましたら、下記の連絡先までご連絡くださいませ。
Asian Leaders Career (記者 國重華)
Tel: 02-254-1520 Email: info@al-career.co.th